ロシア語文法 「対格」について

目的語になるときの形、ロシア語文法で言う「対格」、英語の「目的格」です。名詞も代名詞も変化しますよ。

では「対格(=目的格)」の変化の基本をまとめておくことにしましょう
ロシア語の対格、一覧表

まとめるとちょっと難しそうに見えますね。そこでこのなぞの表を理解するためのポイントを次のようにまとめてみます。



目的格を理解するときのポイント

不活動体名詞(無生物・植物)の場合は主格と、活動体名詞(人・動物)の場合は生格と同形になります
例えば「兄弟」とか「あなた」というのは当然、「人」「動物」の仲間ですから、「活動体名詞」という分類になりますが、この場合、前日に勉強した「生格(所有格)」がそのまま「目的格」となるということです。

そして「場所」とか「モスクワ」とか「無生物」や「植物」、つまりロシア語文法の分類では「不活動体名詞」の場合には、「生格(所有格)」ではなくて、「主格」、つまり辞書に載っている形がそのまま「目的格」として使えるのです。

ということは「目的格」という特別な変化形を暗記しなくてもよいということ。よかったですね。でも「目的格」の節は、「主格」と「生格(所有格)」の復習のパートでもありますから、安心して手を抜かないで下さいね。

前にキリル文字の練習のところで学習した例文
Я вас люблю. ヤー・ヴァース・リュブリュー
の全貌がようやく明らかになりましたね。

вас ヴァース
は「敬称二人称」の代名詞の「生格(所有格)」です。「あなた」は当然「活動体名詞」ですから、目的格に変化させて「あなたを」にしたければ「生格(所有格)」をそのまま使うことが出来たのでした。

ところで「ヴァース」は「敬称二人称」ですから、それほど親しくない間柄で改まった話し方をするときに使いますから、この例文では、告白している人がきっと緊張しているのかも知れません。昔から付き合っていた親しい人に言うのであればきっと「君を」という通常の二人称単数形の「生格(所有格)」=「目的格」を使って次のように言うことでしょう。
Я тебя люблю. ヤー・ティビャー・リュブリュー

さて、前に登場した例文のなぞが解けましたが、せっかくですから、この「愛する」という単語の活用をちょっとだけ見ておくことにしましょう。

愛するの活用

原型が「リュビーチ」で、「リュブリュー」「リュービシ」「リュービト」「リュービム」「リュービチェ」「リューヴャト」と活用していますね。
「話す」という単語の時にはウダレーニエの位置が変化しなかったのですが、この単語の場合には「原型」と一人称単数形以外は最初の「リュー」にウダレーニエがあるのです。しかも語尾に「l」音が一人称単数形のときにだけ付け加えれています。これは不規則活用動詞なのです。

ではこの不規則活用動詞と代名詞の「生格」の練習を兼ねてロシア語作文の問題をいくつか解いてもらうことにしましょう。

練習問題
1. 「私は君のことが好きだ。」をロシア語で言ってください。
2. 「彼は彼女のことが好きだ。」をロシア語で言ってください。
3. 「彼女は彼のことが好きだ。」をロシア語で言ってください。
4. 「彼女は私たちのことが好きだ。」をロシア語で言ってください。
5. 「彼女は私たちのことが好きではない。」をロシア語で言ってください。
6. 「彼女は私たちのことが好きではないのですか?」をロシア語で言ってください。
7. 「彼女はコーヒーが好きではないのですか?」をロシア語で言ってください。
8. 「彼女はビールは好きではないのですか?」をロシア語で言ってください。
9.「彼女は勉強することが好きではないのですか?」をロシア語で言ってください。

さて、今回の練習問題も既存の知識を遣いながら、ほんの少し推理力を問う問題を出題してみました。では解答をしてみましょう。

最初の問題は、この節ですでにそのものずばりが登場していますから、解答できますね。
Я тебя люблю. ヤー・ティビャー・リュブリュー
でしたね。ロシア語では「目的格=この場合には生格(所有格)」というはっきりと意味を表現する形に名詞・代名詞が変化しますから、語順は比較的自由です。そこで英語と同じ語順の次のような形ももちろん正しいロシア語の文となります。

Я люблю тебя. ヤー・リュブリュー・ティビャー
むしろこの形が文法の本などには多く書かれているのですが、「I love you」というような場合にはやはり「you」に相当する部分が強調のために前に飛び出るほうが多いようですね。

次の問題には、三人称単数形の代名詞が登場します。これは
Он еѐ любит. オン・イヨー・リュービト
となります。もちろん
Он любит еѐ. オン・リュービト・イヨー
でもかまいません。
そして次の問題は
Она его любит. アナー・イヴォー・リュービト
または
Она любит его. アナー・リュービト・イヴォー
でも結構ですよ。どんどん進みましょう。

次の問題の解答は
Она нас любит. アナー・ナース・リュービト
これも語順を変えてもいいですね。さて次が重要です。部分否定と全部否定のお話もついでにすることにしましょう。皆さんの中で次のような解答をした人はいますか?
Она нас нет любит. アナー・ナース・ニェート・リュービト
もちろん正解ですよ。語順を変えて
Она нет любит нас. アナー・ニェート・リュービト・ナース
でも結構です。このような形を全部否定と言います。

「述語動詞」と文法的には言いますが、文の動詞の部分のすぐ前に否定語「ニェート」をおくと、文全体を否定することが出来るのです。
ではこんな文は可能でしょうか?
Она нет нас любит. アナー・ニェート・ナース・リュービト
Она любит нет нас. アナー・リュービト・ニェート・ナース

これも可能ですが、これは部分否定と言って、「ニェート」が否定しているのはすぐ後ろの単語「ナース(私たちを)」です。ですから意味は
「彼女が愛しているのは、私たちではない。」ということになります。
通常「否定文にせよ」という問題の解答は、「全部否定」の形を使いますから、最初に説明した二つの文の形をまずしっかり覚えてください。

次は疑問文ですね。
Она нас нет любит? アナー・ナース・ニェート・リュービト?
語尾を上げるようなイントネーションで発音すれば疑問文の出来上がりです。
この「リュービチ」という単語は、「人を愛する」という意味だけではなくて、こんな使い方も出来ます。頻繁に使いそうですね。
Она нет любит кофе? アナー・ニェート・リュービト・コーフィ
Она нет любит пиво? アナー・ニェート・リュービト・ピーヴァ

ここで「ピーヴァ」というのが「ビール」という意味のロシア語です。語尾が「o」で終わっていますから、これは「中性名詞」ですね。
最後の問題です。以前に見てもらった活用表を見ればよいことに気がついた人は解答できたはずです。

Она нет любит учи́ться? アナー・ニェート・リュービト・ウチ
さて、「учи́ться ウチーッツァ 学ぶ・学習する」という単語は、動詞の原型がそのまま使われていますが、これは英語的に言えば「to不定詞」のような使い方です。英語に直訳すると
She does not love to study.
というような形になっています。このように「リュービチ」という単語は、動詞の原型も目的語に取ることが出来ました。もちろん「原型」は「不活動体名詞」ですからそのままの形で目的語になるというのも納得できますね。

さてせっかくここで「учи́ться ウチーッツァ 学ぶ・学習する」という動詞が登場しましたから、この動詞の活用をチェックすることにしましょう。
学習するの活用形

この活用には後ろに「ся」「сь」がついていて今までの動詞とちょっと違う形になっていますね。これを「再帰動詞」と呼ぶのですが、実は「動詞+○○self 自分自身を○○する」という意味の動詞なのです。

「учи́ть ウチーチ 教える」という動詞がまずあって、それに「○○自身」という語尾がつくことで、「○○自身に教える」=「自学自習する」「学ぶ」という意味になるのです。まずは語尾が無い形、つまり「教える」という単語を覚えて、それに語尾をつける練習をして覚えるべき単語ですね。

さらにロシア語の語尾について少し補足します。ロシア語の単語は非常に長い単語が多いのです。接頭語や接尾語と言うものが単語につくことで新たな意味をもった単語を容易に作ることが出来るというのがロシア語の表現力の豊かさの源なのですが、そのせいでどんどん単語が長くなっていくのです。

例えば「учи́ть ウチーチ 教える」の語尾を「ель」にすると、
Учи́тель ウチーチェリ 教師(男性)
という意味になります。
さらにこの語尾に「ница」をつけて
Учи́тельница ウチーチェリニッツァ 教師(女性)
という単語を作ることが出来ます。丁度英語の「動詞+er」で人を表すのと同じだと理解すればよいでしょう。

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