15分でわかる!ロシア語のキリル文字

さて簡単なロシア語「一言会話」は覚えましたから、いよいよこれからが正念場です。実は「一言会話」だけでも上手に使えばコミュニケーション手段としては十分で、これを英語をチャンポンして意思の疎通を図ることも可能は可能です。でもせっかくサイトを訪問して勉強しようとしている皆さんですから、本格派のロシア語に触れてみたいですよね。そのためには「キリル文字」が必要となります。なぜならキリル文字は「ロシア語の発音を表記するための文字」だからです。キリル文字を制する者はロシア語の発音を制します。

これは実は重大な知識を含んだ言葉だということに気がつきますか?
「ロシア語の発音を表記するためにつくられた文字」だとしたら「文字をそのまま読めばよい」と言うことになりますね。そうです。基本は「キリル文字のローマ字読み」なのです。
英語に使われているアルファベットはもともとローマ帝国の言葉である「ラテン語」を表記するために作られた言葉です。ラテン語の子孫に当たる言葉にはイタリア語やスペイン語などがありますが、勉強したことがある人はご存知でしょうが、基本は「ローマ字読み」です。なぜなら「ラテン語の発音を表記するための文字」だからです。

別の言葉の発音を表記するための文字を無理やり英語に当てはめたので、発音とスペルがずれているというのが英語の難しさですね。文字を見て発音するのは英語の方がロシア語より格段に難しいのです。

どうやら難しそうなこの文字は一旦覚えれば、自由自在に発音できるようになる魔法の文字のようですね。それにしても変な文字だと思いませんか?伝統的には、キリル文字とはスラブ人たちにキリスト教を布教するためにギリシア正教会のキュリロスとメトディオスという人が作った文字だとされていますが、現在ではキュリロスとメトディオスが作った文字は、一時的に使用されたけれどもすぐに廃れた「グラゴール文字」だとされています。「グラゴール文字」はネット調べれば分かりますが、とても複雑な文字だったので一般人に定着しなかったのでしょう。キリル文字はグラゴール文字やギリシア語の文字を参考として後に広まった文字のようです。そしてこのキリル文字が読めれば、東スラブ語群であるロシア語、ウクライナ語、ベラルーシ語、南スラブ語群であるブルガリア語、マケドニア語、セルビア語を読むことが出来ます。

これらはギリシア正教会が力を持っている地域で、同じくスラブ系語族であるポーランド語、チェコ語、スロバキア語、スロヴェニア語、クロアチア語はカトリック圏なので、ラテン文字(英語と同じアルファベット)ですね。このことはキリル文字が「ギリシア正教」の布教の目的で作られた文字であることを暗示していますね。難しそうに見えるキリル文字が分かればいろいろな地域で地名が書かれた看板くらいは少なくとも読めるようになります。そしてロシア語が分かれば同じスラブ系語族の言葉であればある程度意志の疎通が出来るようになります。俄然やる気が出てきませんか?



ではいよいろロシア語のキリル文字33文字を順番に覚えていきましょうか。このサイトは「見栄としてのロシア語」ではなく「使えるロシア語」を勉強するためのマニュアルですから、アルファベット順に説明することは避けて、まずは「英語のアルファベット」から容易に想像できる文字を見てみることにしましょう。

Аа アー
Ее ィエー
Ёѐ ヨー
Кк カー
Мм エム
Оо オー
Тт テー

この文字なら何とか読めそうですね。左側に書いたのが大文字、右側に書いたのが小文字で、その横のカタカナはアルファベットの名前となります。
そしてもちろん

Аа アーは日本語の「ア」と同じ発音の母音、
Ее ィエーは名前の通り「ィエー」と発音して母音の仲間
Ёѐ ヨーは名前の通り「ヨー」と発音する母音の仲間。
Кк カーは英語の「k」と同じ音を表す子音、
Мм エムは英語の「m」と同じ発音を表す子音
Оо オーは英語の「o」と同じ音を表す母音
Тт テーは英語の「t」と同じ音を表す子音です。
です。

ここで注意するべきは一点だけです。「o」の音は、日本語の「オ」の音と比べて、口を前に丸く突き出すようにして発音する音だと言うこと。日本人の「o」の音は外国人は弱い音、もっと正確に言えば「オとアの中間音」に聞こえることが多いようです。このことは後でウダレーニエがついていないときの「o」の音を勉強するときに役立ちます。一般にウダレーニエがついている母音の音は日本語の母音の音よりも強くはっきりと発音します。そしてウダレーニエがついていないときには日本語の母音と同じようなつもりで発音すれば通じます。つまりウダレーニエというアクセントがついているところだけ注意すればいいのです。

次は英語のアルファベットに似ているが「他人の空似(そらに)」とも言うべき文字を見てみることにしましょう。
Вв ヴェー
Нн エヌ
Рр エル
Сс エス
Уу ウー
Хх ハー
なかなか面白いですね。まるで読み方が無茶苦茶です。小話の一つにこんなものがあります。
Aさん「ロシア語の文字はなんでこんなに無茶苦茶な読み方をするんだい」
Bさん「それはね。初めてロシアに文字を持ち込んだお坊さん(キュリーロス)がギリシア文字を書いた石板を持っていたんだが、ロシアに到着する前に地面に落としてしまって、石板が割れてしまったんだ。それで文字の順番が分からなくなって無茶苦茶になったんだよ。」
面白い話ではありますが、これは事実ではありませんから念のために。

では順番に説明することにしましょう。まずは発音を説明します。
Вв ヴェー 英語の「v」と同じく唇をかんで発音する子音
Нн エヌ 英語の「n」と同じ音を表す子音
Рр エル 英語には無い音で巻き舌の「r」
Сс エス 英語の「s」と同じ音を表す子音
Уу ウー 英語の「u」と同じ音を表す母音
Хх ハー 喉の奥から勢いをつけて「ハー」と発音するときの音

どうやら読み方は英語から考えると無茶苦茶ですが、文字と発音はきれいに一対一に対応していそうですね。一安心です。発音上の注意をまずしておきましょう。「H(エヌ)」の音は、日本人の発音は英語に関しても弱い音に聞こえてしまいます。

例えば人名で「ジョン・ウェイン」という人の名前を日本人が英語で発音しても聞き取ってもらえないことがあります。日本人の発音の「エヌ」が弱すぎるからです。「ジョンヌ・ウェインヌ」と発音すれば通じます。「エヌ」は「ナ行」ではなくて「ヌ+母音」のつもりで強く発音しましょう。

「P(エル)」は江戸っ子のべらんめい言葉に登場するようなきれいな巻き舌音です。この音が発音できるようになれば非常にロシア語らしい発音になります。「yウー」の音も英語の「u」の音と同じですが、日本人の「ウ」の音は弱いので、しっかり口を丸く前に突き出すようにして発音してくださいね。「x」の音はドイツ語を勉強したことのある人はご存知の音です。「Nachtナハト 夜」の「ch」の音と同じです。そういえばドイツ語の発音記号でも「x」だったというのを覚えていますか?

最後に「これぞロシア語」という初めてロシア語を勉強する人には「斬新」と感じる文字をご紹介しましょう。結構沢山ありますが、ギリシア語の文字を数学の時間に勉強したことのある人はもしかしたら想像できてしまうのではないでしょうか?ではご紹介しましょう。なかなか数が多いですよ。

Дд デー 英語の「d」と同じ音を表す子音
Жж ジェー 英語の「j」に似た音を表す子音
Зз ゼー 英語の「z」と同じ音を表す子音
Ии イー 英語の「i」と同じ音を表す母音
Йй イー・クラトカヤ 非常に短い「ィ」の音を表す母音
Лл イリ 英語の「l」と同じ音を表す子音
Пп ペー 英語の「p」と同じ音を表す子音
Фф エフ 英語の「f」と同じ音を表す子音
Цц ツェー 「ツァ」「ツィ」「ツェ」などの音を表す子音
Чч チェー 「チャ」「チュ」「チョ」などの音を表す子音
Шш シャー 英語の「sh」に似た音を表す子音
Щщ シチャー 「シシ」「シチ」と発音する二重子音
Ъъ分離記号 音を分離するための記号
Ыы ゥイ 「ウ」と「イ」の中間音を表す母音
Ьь軟音記号 音を変化させることを表す記号
Ээ エー 「エ」という音だけを表す母音
Юю ユー 「ユー」という音を表す母音
Яя ヤー 「ヤ行」の音を表す子音

なかなかややこしそうですね。ではまず文字の形の解説をしましょう。数学の時間にギリシア語の文字を使ったことのある人もいらっしゃるでしょうから、それを使ってちょっとだけ解説することにしましょう。

Гг げー 日本語の「ガ行」を表す子音
Дд デー 英語の「d」と同じ音を表す子音
Пп ペー 英語の「p」と同じ音を表す子音
Фф エフ 英語の「f」と同じ音を表す子音
以上の4つの文字はギリシア語の文字の転用です。

「г」の文字はギリシア語の「ガンマ γ」と言う文字の大文字「Γ」がもとの形ですし、「Д」の文字はギリシア語の「デルタ δ」の大文字「Δ」が基本となっています。「П」の文字はギリシア語の「パイ π」の大文字「Π」ですね。円周率のことをこの記号で表しましたね。最後の「Ф」はギリシア語の「ファイ φ」の大文字である「Φ」がもとの形です。「空集合(くうしゅうごう):要素を一つももたない集合」のことをこの記号で表しましたね。

東ローマ帝国の時代に使われていたギリシア語はビザンチン語と呼ばれていますが、小文字ではなくて大文字で全て表記していたそうです。その影響を受けて造られたキリル文字にはギリシア語の大文字が転用されていたのですね。「ゲー」「デー」「ペー」「エフ」は文字は難しいですが、発音はその読みから想像が出来ますね。

Бб ベー 英語の「b」と同じ音を表す子音
Зз ゼー 英語の「z」と同じ音を表す子音
Ээ エー 「エ」という音だけを表す母音
Ии イー 英語の「i」と同じ音を表す母音
Йй イー・クラトカヤ 非常に短い「ィ」の音を表す母音
Лл イリ 英語の「l」と同じ音を表す子音
Цц ツェー 「ツァ」「ツィ」「ツェ」などの音を表す子音
Чч チェー 「チャ」「チュ」「チョ」などの音を表す子音
Шш シャー 英語の「sh」に似た音を表す子音
Щщ シチャー 「シシ」「シチ」と発音する二重子音
Юю ユー 「ユー」という音を表す母音
Яя ヤー 「ヤ行」の音を表す子音



最後にロシア語の五十音図をご紹介しましょう。日本語の音をキリル文字で書くとこんな風になるというイメージですが、是を使って是非ともやってみて欲しいのは、暗号メモです。メモ帳、手帳に予定を書き込むとき、地名や人名などをキリル文字を使って書けば見事に暗号文の完成です。フランス語やドイツ語と比べて学習者が身の回りにいることの少ないロシア語ならではですが、プライベートな事項をキリル文字暗号で書けばあなたのプライバシーは万全です。ちょっと優越感を感じながら、キリル文字が覚えられるこの方法を是非ともお試しアレ。
日本語の音をキリル文字を使って表してみる

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