ロシア語の発音の変化 4つのポイント

さてこのサイトでは初めてキリル文字が登場したわけですが、いかがでしたか?なかなか面白い形をした文字ですね。難しいと感じた方もいらっしゃるかも知れませんが、基本はローマ字読み、文字と音が基本的に一対一対応するということが分かれば覚える価値がある文字であるということがお分かりになられると思います。
15分でわかる!ロシア語のキリル文字

さて基本はローマ字ですが、やはり発音の規則というものがあります。いやだなと思う人もいると思いますが、この規則、実は丸暗記するものではありません。英語でもそうだだったなと思い出しながら読み飛ばせばいいのです。規則があるからそのように発音するというのではなくて、発音しにくいから発音しやすいように変化したということに過ぎないのです。では見ていきましょう。第一の規則です。

1.単語の最後や無声子音の前の濁音の子音は無声化する

文字で言えば次のような発音変化が「単語の最後や無声子音の前」で起こるということです。言葉で説明すると難しく聞こえますね。
「б」(b)→「п」(p) 「в」(v)→「ф」(f) 「г」(g)→「к」(k) 「д」(d)→「т」(t) 「ж」(j)→「ш」(sh) 「з」(z)→「с」(s)
一見難しそうに見えるのはキリル文字にまだなれていないからです。これは実は英語でも起きていて、たとえば
Walked
という「歩く」という意味の動詞の過去形は「ウォークド」ではなくて「ウォークト」と発音しましたね。つまり後ろに母音がないときには、子音を強く読むことが出来なくなって、自然と上のような音になるということなのです。
意識して上のように発音するというよりも、発音すると自然にそうなるというのが正しい表現となります。いくつかロシア語の例を見ておきましょう。

(例) アクセントのある文字は下線で表しています。
Шаповалов (Shapovalov) : シャパヴァーラフ (人名)
снег (sn'eg) : スニェーク (「雪」という名詞)
абсолютно (absol'utno) : アプサリュートナ (「絶対的な」という意味の形容詞)
всѐ / все (vs'o) : フショー (「すべて」という名詞)
дождь (dozhd') : ドーシチ (「雨」という名詞)

キリル文字をそのままよむと一番目は「シャポヴァーラヴ」ですが、語尾の「ヴ」は後ろに母音がないので、弱く発音されて、まるで「f」のような音になっています。また「ヴァー」の部分にウダレーニエがあるので、「ポ」は口を丸くつきだすようにして発音する強い音ではなくてあいまいな音になり、カタカナで表現すると「パ」のように聞こえます。

二番目の「雪」という単語はキリル文字をそのまま読むと「スニェーグ」ですが、語尾は母音がついていないので「グ」と強く発音することが出来なくなって、「ク」と聞こえる音になります。

三番目の単語は英語の「絶対的な」という意味の形容詞「absolute」から入ってきた単語ですが、最初の「アブ」と読むべきところが、すぐ後ろに子音があって、母音がついていないので、強く発音することができずに「プ」という弱い音になっていますね。ちなみい「ユー」の文字は常にこの位置にウダレーニエがあるということは覚えておいてもよいでしょう。

次の単語も本来「ヴ」と発音する文字の次に子音しかないので弱い音の「f」になっています。「ヨー」の文字も常にウダレーニエがおかれる文字だと覚ええおきましょう。

最後の単語は「雨」という意味の単語で重要語彙ですが、文字から発音が想像しにくい単語のひとつです。「zh」の次に母音がないために「sh」の音になっているのですね。
次の規則です。

2.「B」を除く濁音の子音の前の無声子音は有声化する

文字で表現すると次のような変化が起こるということです。

「п」(p)→「б」(b)
「ф」(f)→「в」(v)
「к」(k)→「г」(g)
「т」(t)→「д」(d)
「ш」(sh)→「ж」(sh)
「с」(s)→「з」(z)

例)
сделала (sd'elala) : ズジェーララ (「彼女はした」)
「ス」と言う音をあらわす文字の次が濁音なので、「ズ」と濁っているのですが、これも発音しているうちに自然にそのようになるというのが正しい理解です。まずはキリル文字に忠実に発音してみて、それから上の表のように発音した方が発音しやすいということを体で理解しましょう。

では三つ目の規則です。

3.子音が連続すると音が変化することがある

具体的には
・「тс」(ts)、「тьс」(t's)、「дс」(ds)等は、「ц」(ts)の発音になる。特に動詞の語尾で出てくる「-тся」や「-ться」は、やや詰まり気味に「ッツァ」と発音する。
・「сч」(sch)は「щ」(sh'sh')の発音になる。
・「дз」(dz)は日本語のザ行の子音に近い音になる。
・「дж」(dzh)は日本語のジャ行の子音に近い音になる。
ということなのですが、最初の規則以外はちょっと覚えにくいので、後々登場するたびにご説明することにしましょう。ここでは最初の規則だけ覚えてください。

英語でも「ts」の音を「ツ」と発音しましたが、ロシア語でも同じことが言えるというこなのです。「-тся」や「-ться」もそのままこの規則を適用すると「ツァ」の音になりますが、やや詰まった音になるというところが特殊です。これは再帰動詞と呼ばれる動詞の語尾に登場するスペルなので、詳しくは動詞の活用の勉強が進んでから解説することにしましょう。

4.子音が連続するとある子音を発音しないことがある

これは2つの子音が連続するときにはたまに起こる(例外事項)のですが、3つの子音では必ず起こります(基本事項)。
русский (russk'iy → rusk'iy) : ルースキー (「ロシアの」)
солнце (solnts'e → sonts'e) : ソーンツェ (「太陽」)
здравствуйте (zdravstvuyt'e → zdrastvuyt'e) : ズドラーストヴィチェ (「こんにちは」)
たまに起こる規則と言いながら結構重要表現の中にも登場する規則です。重要単語のスペル練習しながらひとつひとつ覚えましょう。
でも読まない文字なのにどうして書いてあるかが気になりますね。これはその単語の成り立ちと実は関係があって、もともとロシア語の単語の元になった語根と呼ばれるものは非常に短いものだったそうです。この短い語根をいくつも組み合わせて現在のロシア語の単語が成立しましたが、単語がいくつもつながったおかげで発音しにくくなり、慣習上読まない部分も発生してきたということだそうです。

規則としてまとめようと思えば他にもいくつかありますが、一度に登場させると身につかないものです。まずは以上の内容を「なるほどそうなんだろうな」と思って読み飛ばしてください。納得したら後は練習の中で自然とそうなるようにするのみ、練習問題をやってみることにしましょうか。段々ロシア語の勉強らしくなってきましたね。

問題1 次のキリル文字で書かれた単語を発音してください。
1.нет
2.есть
3.север
4.сестра
5.завод
6.город
7.водка
8.друк
9.что
10.солнце


では解答です。
1.「ニェート」と発音します。これは英語の「not」とか「no」という意味で、ロシア語で「いいえ」と否定の答えをするときにも使います。

2.「イェースチ」と発音します。これは英語の「Be動詞」のような意味の動詞で「存在する」ということを意味しますが、ロシア語では省略されることが多いですね。しかし「○○は存在しますか?」という文のように「存在」ということが前面に出てくるときにはこの動詞を使います。

3.「スェーヴェル」と発音し、「北」という意味の名詞となります。最初ん母音にウダレーニエがあるためにきちんとキリル文字を発音して「イェ」という音にあっていますが、二番目の母音にはウダレーニエがないために曖昧な音になっています。

4.「セストラー」と発音します。英語の「sister」と同じ語源の単語で「姉妹」を意味します。最初の母音はウダレーニエがないために曖昧な音で発音され、最後の母音にウダレーニエがあるので長く強く発音されます。

5.「ザボート」と発音して、「工場」という意味の名詞です。最後の子音の後には母音がないので、子音を強く発音することが出来ず、自然に「ト」という音になっています。

6.「ゴーラト」と発音して、「都市」という意味の名詞です。最終子音は母音を伴わないので弱い音になっていますね。そして二番目の母音はウダレーニエがないために「オ」という明確な音ではなくて、曖昧なアの音になっています。

7.「ヴォートカ」と発音します。「ド」と発音したいところですが、後ろが子音なので「ト」の音になっています。もちろんロシア名物のあの「ウォッカ」のことです。

8.「ドルーク」と発音して「友人」という意味になります。

9.「シトー」と発音して、英語の「what」に相当する疑問詞です。最初の文字を「チ」と発音したいところですが、これは発音上の有名な例外です。

10.「ソーンツェ」は「読まない子音」のお話の中にすでに登場していました。「太陽」という意味の名詞ですね。結構ロシア語検定などでは出題される発音の例外です。

それでは次の問題に進みましょう。単語の発音ばかりでは面白くないですね。今度はちょっした文にしてみます。

問題2 次のキリル文字で書かれた文あるいは単語を発音して、意味を想像してみてください。
1.Здравствуйте
2.Привет
3.Доброе утро
4.Добрый день
5.Добрый вечер
6.До свидания
7.Пока
8.Да
9.Меня зовут
10.пожалуйста

では解答に入りましょう。一部を除いてすべてどこかで聞いたことがある言葉だったのではないでしょうか?

1.「ズドラー(フ)ストヴイーチェ」と発音して正式の挨拶でしたね。「こんにちは」とでも仮に訳しておきましょう。

2.「プリヴィエート」は親しい間柄の挨拶表現で、「やあ」のような感覚の言葉でした。ロシア人の友達が出来たら、友達同士で使うといいですね。

3.発音を非常に丁寧にすれば「ドーブライ ウートラ」のようになります。これは「おはようございます」の意味でしたね。英語に直訳すれば「good morning」です。つまり「ウートラ」は「朝」という意味の名詞でした。

4.Добрый день「ドーブルイ ジェーニ」は「こんにちは」とでも訳しましょうか。英語に直訳して「good day」とした方がどんなシチュエーションで使うかが理解しやすいですね。

5.Добрый вечер「ドーブルイ ヴェーチェル」は夕方の挨拶で「こんばんは」とでも訳しておきましょう。英語に直訳すれば「good evening」となります。

6.「ダ スヴィダーニャ」は直訳すれば「またあうときまで」で「さようなら」という意味です。

7.「パカー」と発音して、これは親しい間で使う「じゃあまた」のような表現です。ついでに覚えておきましょう。

8.「ダー」と発音して、ロシア語の「yes」に相当する表現です。ロシア人は、「そうそれそれ」というような表現を、「ダー、ダーダーダーダーダー」といったりします。こんな使い方も出来るようになるとロシア語の達人も近いですね。

9.「ミニャー・ザブート」は「私の名前は○○です」という表現でしたね。直訳すると「人は私を○○と呼ぶ」という意味になります。

10.Пожалуйста「パジャールスタ」と発音します。「ズドラーフストヴィーチェ」と同様に「短いイ」の文字を発音していないですね。前に説明した発音上の例外事項がここに登場しています。

先に練習したとおり、今までに登場した簡単なロシア語表現はすべて実用価値が高いものばかりです。これをロシア語の文字であるキリル文字で書けるということは、その実用価値の高い表現をきれいな発音で発音できるということにつながります。

そろそろ疲れてきた人がいるかも知れませんね。最後の問題はちょっとしたお遊びです。次のキリル文字はすべて、人名もしくは、地名です。発音して正体を確かめて見てください。
問題3 次のキリル文字を発音してください。
1.Ленин
2.Александр
3.Кунашир
4.Итуруп
5.Москва
6.Владивосток
7.Кремль
8.Япония
9.Россия
10.Санкт-Петербург

では解答に進むことにしましょう。
1.「レーニン」と発音しますね。これはもちろんロシア革命の主導者であるレーニンのことです。もう皆さんはこの名前が「怠け者」という意味の「ペンネーム」であることはご存知ですよね。

2.「アレクサーンドル」と発音します。比較的よくある名前なのですが、この名前は長いので、よく省略して「アレクセイ」とか「アリョーシャ」と呼ばれます。

3.「クナーシル」と発音して、「国後島(くなしりとう)」のことです。ロシアではこのように呼ばれています。ちなみにこの言葉自体はもともとはアイヌ語だそうです。

4.「イトゥループ」と発音して「択捉島(えとろふとう)」のことです。これもアイヌ語起源です。

5.「マスクヴァー」と発音します。意味はもちろん「モスクワ」という地名なのですが、ウダレーニエが置かれていない最初の母音が「オ」という明確な音ではなく、曖昧音なのであえてカタカナにすれば「ア」の音になるのですね。

6.「フラディヴォストーク」というのがキリル文字に忠実な発音ですが、「ウラジオシュトク」というロシアの地名です。「ヴォストーク」というのが「東」という意味の名詞で、実は「東を征服せよ」という意味だそうです。ロシアが東に進出したときの拠点のひとつで軍港です。

7.「クリェームリ」と発音でして、「クレムリン宮殿」もしくは「宮殿」のことを意味します。この単語は大文字で書くと「クレムリン宮殿」または「ロシア政府」のことを象徴的に意味して、小文字で書くと一般名詞の「宮殿」となります。

8.「イポーニア」と発音します。想像がついた人がいますか?これは「日本」という意味です。

9.「ラッシーア」と発音します。もちろん「ロシア」のことですよ。最初の音が巻舌の「r」の音なので、昔の日本人には「オロシャ」のように聞こえたそうです。

10.「サンクト・ピチルブールク」と発音します。地名で「サンクト・ペテルブルク」のことですね。ウダレーニエがおかれていない母音の音が曖昧な音に変化していることにだけ注意してください。


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